病人・患者さんに言ってはいけない言葉5選【お見舞いなど】

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kazuki-ONEMasterです。

 ご家族や親族、友人・知人、職場の方などが入院されたときに、どんなお見舞いの言葉をかければ良いか悩んだ経験があるかと思います。当然、悪気など一切なく、

「病気を早く治してほしい」

「頑張ってほしい」

「病気に負けないでほしい」

という思いからお声がけされているはずです。

 しかし、励ましや優しい気持ちから発している言葉でも、思いとは裏腹に患者さんを精神的に追い込んだり、傷つけていることもあります。

 そこで今回は、お見舞いの言葉として言ってしまうと患者さんにストレスやプレッシャーを与えてしまう、言ってはいけない言葉(かけてはいけない言葉)5選を紹介します。

 5選の内容は、

1、『○○さんも同じ病気』(他者との比較)

2、『大丈夫でしょ?』や、『痛くないでしょ?』

3、根拠のない『大丈夫』

4、『頑張れ』や『負けるな』

5、『闘病』

です。こちらを解説していきます。

 今回の5選は、ついつい言ってしまいがちな言葉ではないでしょうか。私も入院中に何度か言われたことがあります。

 言われる側としては、入院してご迷惑をかけて、そのうえでお気遣いいただいて、お見舞いの言葉をかけてもらえるのは本当にありがたい事ですが、内容によっては心に響かないどころか、ストレスやプレッシャーになってしまうのです。

 患者さんは何を言われずとも、家族、職場復帰、自身の健康への心配や悩みを抱えています。お見舞いの言葉一つで、それを増やすことも減らすこともできてしまいます。

 そして、わざわざ、この記事を見るようなマジメで気遣いができるような方には、今回の5選の言葉の言い換えについてもお伝えします。

 自己紹介です。

 筆者は、2018年10月頃(当時35歳)、急性前骨髄急性白血病を発症し入院しました。期間としては、通常の治療(入院)を半年間行って無事退院(2018/10/17~2019/04/17)。その約半年後に再発を確認し、自家移植、放射線治療まで1年ほど入院生活を送り、現在は治療を終え退院しています。(2019/12/03~2020/12/30)

 ちなみに今回の病人・患者さんに対して、お見舞いなどで言ってはいけない言葉5選の言葉は、私が入院している病院の医師、看護師らをはじめとした病院関係者は全く使いません。

病人・患者さんに言ってはいけない言葉5選【お見舞いなど】

困ったイメージ

 この記事は、私が以前noteに投稿していた記事が原案です。

1、『○○さんも同じ病気』(他者との比較)

 患者さんから病状説明をする際などは便利な時もありますが、基本的にお見舞いとして言われた時の患者さんの解釈は『○○さんも頑張ってるんだから、あなたも頑張りなさいよ』と、なります。

 全く同じ病気(病名)だったとしても、治療方針や治療期間は患者さんによりまちまちです。

 都合の良い比較ばかりしてしまうと、治療が長引いている時や体力の回復が追いつかない時などに患者さんは不安や焦りを感じてしまいます。そうなると、患者さんにとってプレッシャーになります。

 結果、無理なリハビリでさらに体を壊してしまったり、逆に諦めて何もやらなくなったりと、ただストレスを溜めて退院の日を迎える事になってしまいます。また、治療が遅れて入院期間が延びてしまう原因にもなりかねないので、気をつけてください。

 2、『大丈夫でしょ?』や、『痛くないでしょ?』

 わかりやすく言うと『薬あるから大丈夫でしょ?』や、『麻酔使うから痛くないでしょ?』といった感じです。

 薬に副作用はつきものですし、副作用は一瞬ではありません。例えば、抗がん剤の吐き気などは、1日中止まらない吐き気が数日間、数週間と続く患者さんもいらっしゃいます。さらに、セットで下痢や口内炎(粘膜全てに障害)が発生し、同じく数日から数週間続きます。また、脱毛は抗がん剤投与から10日以上経ってから突然やってきます。

 手術や検査については、麻酔を使っても痛い場合が多々あります。麻酔が効きにくい場所もありますし、術後に痛むこともあります。

 病気やケガの苦しみや痛みは本人にしかわかりません。仮に元気そうに見えても、見た目だけでものを言ってしまうと浅はかな印象を与えてしまいます。

3、根拠のない『大丈夫』

 まず、根拠があるないかで言葉の重みがまるで違います。

 病気の治療(特に人間が持つ治癒力を発揮するため)には、ネガティブ(悲観的)な感情を持たずポジティブ(楽天的)に物事を考える思考は大事です。

 しかし、『死の可能性』、『完治できるかの不安』、『後遺症の心配』などを抱えている患者さん相手に、根拠もなく適当に大丈夫と励ましても心に響かないどころか、哀れに思われていると受け取られストレスを与えてしまいます。

 患者さんは、病院・病室という空間にいると、余計なぐらいに心配や不安要素について考えてしまいがちです。せっかくのお見舞いの言葉がさらに心配や不安、ストレスを与えてしまう事に繋がらないよう、根拠のない『大丈夫』はやめましょう。

4、『頑張れ』や『負けるな』

 励ます思い、鼓舞するためについつい言ってしまいがちな言葉ですが、患者さんにとってはプレッシャーとなる言葉です。

 なぜ『頑張れ』や『負けるな』という言葉が良くないのか、一つずつ解説します。

・頑張れ

 患者さんは、頑張れと言われてしまうと何も努力していないような感覚になります。体を動かせない場合、頑張りようもありませんし、体が動く患者さんの場合では、すでに人知れずリハビリに取り組んだり、学習・スキルアップに励んでいることも多いです。

 つまり、言われるまでもない一言なので、ただの『頑張れ』はやめましょう。

・負けるな

 入院治療の生活において、抗がん剤、薬、手術など、ただでさえ肉体的にも精神的にもダメージを受けているのに、さらに患者さんを闘わせるような一言を浴びせることになります。

 自分の意志では、病気やケガに勝てません。リハビリや筋トレをしても、病院食を残さず食べても、病気が治るかどうかは別の話です。

 患者さんに負けるなという言葉をかけても、まだ何か足りないかと患者さんを精神的に追い込んでしまうだけなのでやめましょう。

 ここまで5選のうち4つが出てきましたが、共通するのはどれも患者さんが『YES』を言わざるを得なくなり、弱音を吐くこともできなくなります。お見舞いの言葉と言いつつ、見舞う側本位の答えの決まった命令にもなってしまいますので、気をつけましょう。

5、『闘病』

 特に、がんの治療をされている患者さんに使われることが多いかと思います。

 前述の4、『頑張れ』や『負けるな』にも関係してきますが、入院治療というのは、基本的に病気と闘うことではありません。闘おうとすればするほど患者さんは苦しくなっていきます。焦ったところで突然体調が良くなるわけでもありません。

 記事を読んでくださっている方は『闘病』という言葉にどういうイメージをお持ちですか?

 闘病生活から立ち直り、活躍する姿ばかりでしょうか。それとも、テレビのニュースや特集番組などでよく見られる、辛い闘病生活の果てにこの世を去るという流れでしょうか。

 どちらかと言えば、テレビのニュースや特集番組などでよく見られる、辛い闘病生活の果てにこの世を去るという流れがほとんどではないでしょうか。

 もし、後者の場合、そのイメージを患者さんに押し付けてしまっていることにもなります。『闘病』という言葉一つからでも、お見舞いする側の患者さんに対するイメージが出来上がってしまい、そういった言動になっていきます。これは、言われる側の患者さんにも同じことが言えます。

 脳科学的な話になりますが、言葉にはイメージや固定観念があり、それが相手の脳にどう帰属するかで相手の意識が変わってきます。

 患者さん自身が『入院→闘病=辛い』というイメージを持って入院治療を続けていると、入院生活は辛いとなってしまうものです。一度そう思ってしまうと、治療の経過が悪い時、体調不良の時など、知らず知らずのうちに悪い方向にばかり考えてしまいます。これが『闘病』という言葉を使うべきではない理由です。

病人・患者さんに対して、お見舞いなどで言ってはいけない言葉5選 言い換え

花を差し出す

 無難な言い換えを紹介していきます。

 決めつけたような言葉ではなく、質問に変えることで使いやすくなる言葉もあります。もちろん、言葉そのものを変えた方が良い場合もあります。

 順番に解説していきます。

1、『○○さんも同じ病気』(他者との比較) 言い換え

『○○さんと同じ病気でも、どんな症状や薬の副作用がありますか?』

 言い換えというよりは言葉を付け加えることになりますが、ポイントは決めつけではなく質問に変えることです。

 →まずは同じ病気(病名)であっても、患者さんごとに状況が違うことに理解を示す

 →何が辛いかなどを患者さんの口から言ってもらう

 患者さんの立場からすると、自分の状況を理解してもらえることは不安要素を減らすことに繋がります。

 入院生活を送っていると、自分(患者)が家族や親族、職場にどう思われているかなど気にしてしまいます。お見舞い(面会)の方に病状、薬の副作用などを理解してもらえることは一つの安心になります。

2、『大丈夫でしょ?』や、『痛くないでしょ?』 言い換え

→『大丈夫ですか?』や『痛くないですか?』

 こちらについても『でしょ?』という決めつけではなく、『大丈夫ですか?』や『痛くないですか?』など、患者さんが感想を言えるような質問に言い換えましょう。

 患者さんは入院生活において、言いたくても言えずに我慢していることは色々とあります。少しのことでも、自分の痛みや苦しみを理解してもらえると嬉しいものです。

 患者さんの感想にあわせて、今後の治療方針を聞くなど、話を聞いてあげるのも良いです。

3、根拠のない『大丈夫』 言い換え

→根拠のある『大丈夫』

 基本的に大丈夫という言葉は勧めませんが、言い換えて使うのなら根拠を持って大丈夫と声掛けするのが良いです。

 なぜ、基本的に勧めないかと言うと、その根拠に生存率・死亡率・再発率などの数字を用いる場合、0%や100%というのはほぼありません。つまり、100%大丈夫という確証はほとんどの場合ありません。

 例えば、医師や看護師など医療従事者が患者さんに病状・治療経過などを説明する際にも、安易に断定する言い方はしないはずです。お見舞いの言葉も同様に考えたほうが良いです。

 それでも使うという場合、成功(治癒、完治)する確率があることを根拠にすることで患者さんの安心にも繋がります。高確率であればなお良いです。

 例えば白血病の治療の場合では、様々な過程で5~10%の死亡率があげられます。逆に言うと、90%以上の生存率にかけて、10%のリスクをとり、治療していくのが一般的です。

 白血病は、現在では治る病気とされていますが昔はそうではありませんでした。もともと、白血病になった時点で余命宣告され死亡していたかもしれないものを、治療をすることで90%以上が生存できる可能性があり(状況により確率は変わりますが)、完治させることも可能になっています。

 例にあげた白血病についての場合であれば、上記の根拠や理由をもとに『大丈夫』と声をかければ、患者さんの安心に繋がります。とはいえ、10%の死亡率を気にされる患者さんもいます。死亡率以上に生存率にフォーカスできて、患者さんが納得できるような『大丈夫』であれば患者さんにとっては嬉しい(心配や不安を減らせる)お見舞いの言葉になります。

4、『頑張れ』や『負けるな』 言い換え

→『焦らないで』、『ゆっくり治療して』

 患者さんを追い込まないような言葉に言い換えましょう。頑張らせない、闘わせないことがポイントです。

 一番良いのは、『安心』を与える言葉です。安心に繋がる言葉でしたら、患者さんやご家族それぞれにあると思います。

 『家のことは心配しないで』

 『お金のことは心配しないで』

など。他にもご家族やご親族の方であれば高齢のご家族の面倒、子供の面倒をどうするかなどを言ってもらえると安心できます。

 職場の方でしたら、

 『ゆっくり治療してください』

 『(戻る場所がある前提で)待っています』

なども良いです。

 入院・治療で数か月休職した時に患者さんの心配の一つは、元の職場に復帰できるかどうかです。戻れる場所があるなら、伝えてあげた方が安心して入院生活を送れます。

 また、すでにリハビリ・筋トレやデスクワークを始めているような患者さんであれば、『頑張りすぎないで』という言葉も良いです。その方が頑張るものですし、患者さんの活動を理解しているという認識にも繋がります。

 これは、頑張っていることがわかるから『頑張りすぎないで』という言葉が出るわけです。つまり、『すごく頑張っているね』と褒めているのと同じで、患者さんは言われると嬉しいものです

5、『闘病』

→『治療』、『療養』

 治る病気であれば、『治療』や『療養』が適切です。本質的に、入院生活の目的は治療や療養になります。医師や看護師だって患者さんに対して病気と闘えとは言いません。

 今回、この記事では、病気が治る見込みがある患者さんへのお見舞いの言葉として提案しているので、『闘病』という言葉は良くないとし、言い換えとしては『治療』、『療養』を勧めます。

 もちろん、患者さん自身が好んで『闘病』という言葉を使っているのなら、それに合わせた方が良いです。患者さんが満足してストレスを溜めないことも大事です。

 しかし、患者さん自身も『闘病』という言葉を使っていないのであれば、『治療』や『療養』という病気を治すための本質的な言葉を使って、潜在的にも病気は治るということをイメージさせることが大事です。

 別の記事で闘病という言葉について解説しています。興味がある方は下のリンクからご覧になってください。

さいごに

 いかがでしたか?

 今回の5選は他の患者さんの意見から、面会時に言われたことや、私自身も入院中に言われて嬉しくなかった言葉から選びました。

 数か月に及ぶ入院生活を送っている患者さんは、精神的にも病んでいます。せっかくのお見舞いの言葉が負担になってしまうのはもったいないので、今回紹介した言い換えなども使いながら患者さんの負担にならないような言葉で声をかけてあげてください。

 そのお見舞いの言葉が患者さんの病状を良くして、治療の手助けになる可能性もあります。

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